(※※)大昔話: 山田は、大学院生のとき「一定時刻に縛られない事象」に対する量子力学的確率について 指導教官(高木 伸先生)とともに研究し、そうした確率が矛盾なく定義できるための条件(no interference condition)を見い 出しました(Prog. Theor. Phys. 55, 985 (1991))。 この研究は、J. B. Hartle, Quantum kinematics of spacetime. I. Nonrelativistic theory, Phys. Rev. D37 2818 (1988) を読むことからスタートしたものです。読み進めるうちに、同論文には重要なことが欠けていることに気が付き、それを no interference conditionとして定式化したのですが、ハートル教授はそれと本質的に同じ条件(decoherence condition)に、 以下の論文の中で先に到達していました。
M. Gell-Mann and J. B. Hartle, in Proceedings of the Third International Symposium on the Foundations of Quantum Mechanics in the Light of New Technology, edited by S. Kobayashi, H. Ezawa, Y. Murayama, and S. Nomura ~Physical Society of Japan, Tokyo, 1990.
プライオリティを失ったことは正直残念でしたが、後にハートル教授から「お前の論文にはindependence of thoughtがあり、独立した ものだ」という趣旨のお手紙をいただきました。1991年に一般相対論の国際会議MG6でno interference conditionに関係した研究を発表する機会をいただきましたが、これもハートル教授あるいはその共同研究者に後押ししていただいたお陰のようです。ちなみに、MG6で発表した際にはホーキング教授が最前列に座っておられ、緊張しました。のちに、ホーキング教授がお忍びで仙台にいらしたとき、一言でしたがお話させていただく機会がありました。貴重な思い出です。